女の旅

小説家。
人妻。
五〇歳。
旧赤線街、ストリップ、ラブホテルーー日本全国の色街をひとり彷徨い、男と、セックスと、女の生き方を問う。
情念のハードボイルド・エッセイ。
<目次>なんば…ずっと男が怖かったのだということを、女性とセックスして思い出した。
広島…・人生は思い通りにならない。
けれど、それが不幸だとは限らない。
渡鹿野島・・あんたたちだって、セックスしてんだろ? セックスして生まれてきたんだろ?加太…・セックス、性欲は私にとっては自分の人生を破壊した罪悪だった。
岐阜…・彼女は誰のものにもならないまま、あるとき、永遠に皆の前から消えてしまう。
十三…・当たり前に「若い女」を享受している人たちとは、違う世界に生きているから。
彦根…・社会からこぼれ落ちた、まっすぐ生きられない人間ーーそれは、私自身だった。
六本木…痛めつけられたい、虐められたい、支配されたい。
好きな男になら、何をされてもいいと思っていた。
五条楽園・・赤は女の色だ。
毎月血を流す度に、そう思う。
子も産まぬのに、まだ、血を滴らせている。
山形…・死の匂いが漂う場所で、自分が生きていることを確かめているのだろうか。
生駒…・人前に出ることは、傷つけてくれと言っているようなものだと、たまに考える。
小倉…・善と正義を掲げ、それに外れた人々を糾弾する声がネットや実社会にも溢れていて、しんどい。
梅田…・いっそ、そうして誰かに殺されるほうが、自死を選ぶより楽な死に方だと思っていた。
道後…・私の「幸せ」は、世間が言う「女の幸せ」ではないかもしれないけれど。
別海…・どうしてあんな醜い女が男たちからの金で働かずに生きられるの。
渋谷…・四十歳なんて、水の中で息を止めるように、一瞬だけ我慢して、乗り越えたらよかったんだよ。
姫路…・私は長い間、ラブホテルでしかセックスをしたことがなかった。
城崎…・暗鬱な日常から自分を救ってくれるのは、セックスだけのような気がしていた。
比叡山…愛や恋などではなく、ただ、男が必要だ。
鳥辺野…「女」として生きていたいから、男という存在への執着が強くなる。
別府…・「運転手とバスガイドって、デキてるんですか?」どうせなら、一回だけでもやっときゃよかったな。
芦原…・踊り子の裸は、女の人生が浮き彫りになる。
だから私は、若くない踊り子のステージを見るのが、好きだった。
宮津…・私は、底辺なのだ。
人としても、女としても、劣等生だというのを、思い知らされた。
長崎…・この世に、「女」であることで金銭を得たことがない者が、どれだけいるのだろうか。
高知…・背徳的な欲望を持った人間は、逃げ場を失って、どこに行けばいいのだろう。
どうやって生きればいいのか。
恐山…・若い頃は、死にたいと思わない日はなかった。
けれど私は図太く生きながらえてしまい、五十歳を迎えようとしている。
甲子園…人は弱い生き物だ。
様々な鎧を纏って心身を守り、生きている。
飛田新地・・多くの人が、必死に取り繕っているだけで、正しく生きてはいないのだ。
祖谷…・私だって、綺麗な若い女だったなら、AVに出たかった。
熊野那智・・ああ、死後の世界はこんなふうに闇しかないのだと思った。
地獄も極楽もない、ただの闇。
福島…・セックスでしか癒されない、セックスでしか救われないものが人にはある。
浅草…・めんどくさい「女」という性を捨てきれず、あがきながら、私は年を取る。
ーーーーーーーーーーーーーー・プロフィール花房観音(はなぶさ・かんのん)1971年兵庫県生まれ、京都府在住。
2010年『花祀り』で第一回団鬼六賞大賞を受賞しデビュー。
官能小説やホラー小説、エッセイほか執筆活動の傍ら京都観光のバスガイドを務めている。

まだレビューはありません

購入・お申し込みはこちら