薔薇色の門

性の歓びを知らない日本の妻。
緒方敬子もその一人だった。
小麦色のすばらしい肢体の持主である敬子は、並はずれた羞恥心と、みどり児の素直な魂をもち続ける。
幼女期のお医者さん遊び、少女期のS、女教師の倒錯的な愛撫、そうした性の歴史も、敬子の心を歪めることはできなかった。
戦争で失った清純な恋。
粗野な夫は、彼女を肉の塊としか見てくれない。
初夜と変らぬ屈辱と嫌悪にまみれた日々……そこに愛の不在を見ぬく年輩の商業美術家・三村に、敬子はいつしか惹かれていく。
きわめがたい女の性の機微を、幼児期から克明にたどり、幸福への門戸を開く異色の傑作長篇。

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