
沙智が初めて愛した人、それは実の兄、医学部へ通う翔だった。
もちろん誰にも言えずに。
が、兄の名前を口にしながら快楽に耽った激しい自慰を、偶然、覗かれた夜、一度だけギリギリの願いが……直後、家を出た兄は事故で死ぬ。
夏、暑い盛りのことだった。
その日から、沙智は声を失った。
大学生になったとき、そんな沙智を愛してくれる人が現れる。
初めて結ばれる夜、彼は幼い頃に心臓移植で生き延びていたことを彼女に話して聞かせるのだったが……【著者略歴】松崎詩織(まつざきしおり) ─ 2006年「フラジャイル」にて第四回幻冬舎アウトロー大賞特別賞を受賞。
同年『教育実習生』(幻冬舎)でデビュー。
女性の心の襞に刺さる作品に定評がある。
ラストの鮮やかな展開は特徴のひとつ。
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